なぜ、こんなに不安なんだろう?
予定をこなして、友人と過ごして、SNSを眺めて……
それなりに充実しているはずなのに、どこか心が落ち着かない。
「何か足りない気がする」「ずっと焦っている」
そんな感覚を抱えていませんか?
それは現実の不安ではなく、脳が少し疲れているサインかもしれません。
私たちの脳は、過去のことや未来の心配ばかりを考える傾向があります。
けれど、“今この瞬間”を感じられない時間が増えるほど、不安は強くなることが分かっています。
ハーバード大学の研究(Killingsworth & Gilbert, 2010)では、「心が“今ここ”にいない時間が長い人ほど、幸福度が低い」という結果が報告されました。
つまり、“今を感じていない”ことこそが、不安の正体なのです。
では、どうすれば心を“今ここ”に戻すことができるのでしょうか。
その方法のひとつが、近年注目されている「マインドフルネス」です。
マインドフルネスとは? ― “今を感じる”練習
マインドフルネスとは、「今この瞬間の自分に気づく」こと。
過去の失敗や未来の不安にとらわれず、“いま、ここにいる自分”を丁寧に感じる練習です。
マサチューセッツ大学医学部のジョン・カバット・ジン博士が提唱したMBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)は、8週間の実践でストレスホルモン「コルチゾール」の分泌が減り、免疫機能が高まるという研究結果を示しています。
マインドフルネスは「何も考えないこと」ではありません。
むしろ、「考えている自分」に気づくこと。
思考を止めるのではなく、思考と距離を取る練習なのです。
ほんの数分でも、意識を“今”に戻すことを繰り返すうちに、心の中のざわめきは静かに整っていきます。
“考えすぎ”の正体 ― 脳の防衛反応
「つい同じことを何度も考えてしまう」「寝る前に不安が止まらない」
そんな状態を「考えすぎ」と呼びますが、それは怠けや性格ではなく、脳の防衛反応です。
人の脳には、何もしていないときに働く「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という回路があります。
これは過去や未来に思考を飛ばす性質があり、過去の後悔、未来の心配を繰り返すことで“危険を回避しよう”とします。
でも、頭が常に回っていると、脳は休む暇を失い、本来の「いまを感じる」力を見失ってしまいます。
UCLAの研究(2012年)では、マインドフルネスを日常的に行う人は、脳の扁桃体(不安や恐怖を司る部分)の活動が抑えられ、ストレス耐性が向上することが確認されています。
つまり、マインドフルネスは「不安をなくす方法」ではなく、“不安に飲み込まれないための筋トレ”なのです。
今に戻る3つのステップ ― マインドフルネスの実践
マインドフルネスは、特別な瞑想ではありません。誰でも、今日から3分で始められます。
ここでは、毎日続けやすい3つの方法を紹介します。
Step1. 呼吸に意識を戻す
静かな場所で、深く吸って、ゆっくり吐く。
息の流れを感じるだけで、身体は“今”に戻ります。
呼吸を意識すると、脳が「今、私は安全だ」と判断し、緊張や焦りを和らげる副交感神経が働き始めます。
Step2. 五感に意識を戻す
不安や焦りが強いときは、頭の中で“未来”や“過去”に飛んでいます。
そんなときこそ、五感を通して現実に戻るのが効果的。
- お茶の香りを深く吸い込む
- 肌に触れる空気の温度を感じる
- 足の裏で床の感触を確かめる
たった数秒でも、思考のループが静まり、心が“今”を取り戻します。
Step3. 感情を観察する
不安を「悪いもの」と決めつけないこと。
「私は今、不安を感じているんだな」と言葉にしてあげるだけでOKです。
それだけで、脳は“客観的な観察モード”に切り替わり、不安の渦の中心から少し離れられます。
大切なのは、うまくできることではなく、気づけたこと自体が一歩だということ。
不安を“消そう”としなくていい
不安をなくそうとすると、逆に意識がそこに集中してしまい、
不安が強化されるという心理的現象があります。
これは“白クマ効果”と呼ばれ、「白いクマのことを考えないで」と言われると、かえって白クマが頭から離れなくなる、というもの。
マインドフルネスの目的は、不安を消すことではありません。
不安と共にいても安心できる自分を育てること。
「不安がある=生きている証拠」と捉えてみてください。
あなたが不安を感じるのは、それだけ真剣に生きているから。その感情を否定する必要はないのです。
マインドフルネス以外の“感じるケア”
心を整えるために、“感じる力”を取り戻す方法は他にもあります。
たとえば、「ボディアウェアネス」や「セルフプレジャー」も、身体感覚を通じて“今ここ”に戻る効果があるケアです。
ボディアウェアネス
身体の動きや感覚を丁寧に観察する方法。ストレッチやヨガのように、呼吸と動作を合わせながら、「今、自分の身体がどう感じているか」に意識を向けます。
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セルフプレジャー
自分の身体に触れ、安心や心地よさを感じる時間を持つセルフケア。プレジャーは性的行為だけでなく、“自分を優しく扱う”という心理的回復行為でもあります。
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どちらも、「感じる=生きている感覚を思い出す」ケアです。思考ではなく感覚に意識を戻すことで、心と身体が静かに整っていきます。
まとめ ― “今を感じる”ことが、心を癒す
心を整えるとは、外の状況を完璧にすることではありません。
ただ、呼吸を感じ、手の温もりを感じる。
その“今”を思い出すだけで、心は落ち着きを取り戻します。
未来を考えるのをやめる必要も、過去を忘れる必要もありません。
それらを抱えたまま、「今ここ」に戻るだけでいいのです。
たとえ1日3分でも、「私はここにいる」と感じる時間を持ってください。
その小さな時間が、あなたの心をやさしく整えてくれます。
心をととのえるためにできることをもっと深く知りたい方へ
日々がんばっているアナタ、知らないうちに心と身体がバラバラになっていることも…
身体が発しているサインに気づき、自分の気持ちや考えをしっかり聞くためのメソッドをご紹介します。


